医学博士 石原結實先生 特別講演会
石原結實先生のプロフィール
1948年、長崎県生まれ。
長崎大学医学部を卒業して、血液内科を専攻。
1981年に同大学大学院医学研究科博士課程を修了し、医学博士。
現在、イシハラクリニック院長。スイスのB・ベンナー病院で難病の食餌療法を学び、モスクワの断食療法病院で研修を積む。コーカサスの長寿村にも調査研究に出向き、独特の石原式自然療法を確立。
数多くのTV出演や著書で知られる石原結實先生(医学博士、イシハラクリニック院長)をお招きし、99年3月25日午後、東京・新宿の住友ビル「スカイルーム47F」に於いて当普及会主催の特別講演会が開かれました。
石原先生は、スイスやモスクワでガンの食餌療法断食療法を学ばれ、年月をかけて独自の石原式自 然療法を確立。クスリに頼らず病気を防ぎ、治す健康法とはいかなるものか。
沢山のエピソードを交えながら病と冷えの関係や症状別の食べ物・食べ方などを判りやすく講演されました。以下に講演の概要を紹介します。
三大成人病予防が長寿の要
日本人の死因でダントツに多いのがガンです。毎年35〜36万人が新しくガンになり、年間28万人が亡くなります。最近は、毎年1万人ずつガン死が増えています。去年、「医者が末期ガン患者になってわかったこと」という本がベストセラーになりました。著者は脳腫瘍、脳外科の手術では日本で十指に数えられた名医でした。
ご自分が専門とする脳腫瘍になり、亡くなる前に本を出版されたのですが、何がわかったかというと患者の立場がわかっただけで、なぜ腫瘍が自分の身に降りかかってきたかについてはわからなかったのです。
現代医学とはそういうもので、国立ガンセンターの総長であっても初代から五代目まで全員ガンで亡くなられています。
手術で治る人もいますが、非常に難しい病気です。
二番目� �多い死因は脳卒中で、その数は14万3千人です。
三番目は心筋梗塞で13万8千人。
四番目は肺炎、気管支炎で8万人。
五番目が事故死で4万人。
六番目が老衰で3万人。
七番目が自殺で2万5千人です。ずっと2万1千人くらいで推移してきましたが、おととし、去年と増えています。
八番目は腎不全。腎硬化症です。
九番目は肝硬変。
十番目が糖尿病です。八、九、十番目はそれぞれ1万人台です。
毎年、全部で90万人くらい死亡しますが、十番目までで65万人、つまり七割以上を占め、そのうち、ガン、心筋梗塞、脳卒中の三大成人病が55万人でなんと六割以上を占めていることになります。
人間は120歳まで生きられる
ですから三大成人病が予防できれば、相当長生きできることになります。私は世界的に長寿で有名なコーカサス地方を5年にわたって訪ね、研究調査を行ってきました。
グルジア共和国科学アカデミー長寿医学会名誉会員という大袈裟な称号もいただいていますが、長寿学者のダラクシブ教授と話をしていて非常に興味深いことをお聞きしました。
人間は120歳になると血液型がみなO型になるというのです。
日本人はA型が四割、O型が三割、B型が二割、AB型が1割ですが、もともとの基本はO型だそうです。人類の起源は300万年前の東アフリカにあるといわれます。295万年はその地域にいて、その後、世界各地に分かれて血液型も分かれたそうです。
どのような人はロバート·E·知ってはいけない。
人は死ぬと仏様になるといいます。仏様とは世のしがらみから"ほとける"という意味だそうです。その点、O型というのは初めからほとけているわけです。物事をあまり気にしないというか、適当というか。
とにかく、人間は本来、120歳まで生きられるということです。
食事の欧米化で病気も欧米化
さて、三大成人病が予防できれば長生きができるのですが、わが国の最近のガンの傾向には変化が見られます。胃ガン、子宮頸ガンなどは減ってきました。増えているのは肺ガン、大腸ガン、乳ガン、卵巣ガン、子宮内膜ガン、膵臓ガン、前立腺ガン、白血病、食道ガン、脳腫瘍などいわゆる欧米型のガンです。
脳卒中も昔は脳出血が多かったのに、今は脳梗塞ばかり目立ちます。逆転したのは昭和49年です。
心筋梗塞は心臓の筋肉に栄養を送る冠動脈の血栓・梗塞で、欧米人の死因のトップはこれです。
病気が欧米化した原因は食生活の変化です。昭和25年〜30年と現代を比べると、肉の摂取量は15倍くらいになっています。卵が12〜13倍。牛乳・乳製品は25倍です。一方、米は0.65倍。ジャガイモは四� ��。サツマイモは13分の1になっています。
つまり、植物性の炭水化物、蛋白質の摂取が減って、動物性蛋白、脂肪が増えているのです。
高蛋白・高脂肪、そして低炭水化物。文明化すると白いものを好み、玄米は白米に、黒パンは白パンに、黒砂糖は白砂糖にという具合で、お米の胚芽やセルロースは取ってしまいます。
ビタミン、ミネラルが不足すると病気になる
本当は、胚芽の中にものすごく優秀な植物性蛋白と脂肪、ビタミン、ミネラルといった微量栄養素が入っているのです。ビタミンの「ビタ」はバイタルファインといって生命を表し、少量でも命に関係します。
ミネラルは、鉱物すなわち土の中の成分をいいます。人間は死んで土葬されると筋肉や脂肪はすぐになくなってしまいますが、骨と灰はずっと残ります。それは、鉱物性の金属だからです。鉄、銅、亜鉛、カルシウム、マンガン、マグネシウム、ケイ素、ナトリウム、ヒ素、金などです。
ビタミンには30種類、ミネラルには100種類くらいの微量栄養素があります。合わせて約130種類ですが、そのうちの1種類が不足しただけでも病気になってしまいます。
ビタミンAが不足すると鳥目、肌荒れ、免疫力の低� ��が起きます。肺ガンや膀胱ガンにもなりやすい。
ビタミンBはクル病。Eは不妊症。Kは出血しやすくなる。B1は白血病、B2は口内炎、B3は精神病、B17は別名「アミグダリン」といって、これが不足するとガンになりやすい。
ビタミンCの不足は壊血病。白血球が減少して細菌に冒され、肺炎とか、血小板が減って出血しやすくなります。
Uの不足は胃潰瘍、Aはお乳の分泌、Pは血管に支障をきたします。
鉄分の不足は貧血。銅は成長が止まったり、髪の毛が赤茶けたりします。
亜鉛は精力や味覚、嗅覚が落ち、アトピーはじめ皮膚病の一因にもなります。アトピーの人は必ず亜鉛が不足しています。亜鉛が多く含まれる食べ物は、エビ、カニ、イカ、貝、牡蛎などです。植物では生姜が多く、ニンジンの400 倍といわれています。
カリウムの不足は筋肉が弱り、マンガンは糖尿病。マグネシウムは精神病やガン。ケイ素不足は爪の伸びが悪くなり、髪の毛が生えなくなります。コバルトはビタミンB12ができなくなり、悪性貧血を起こします。
馬発熱クリス·トーマス
ニンジンは驚異の食物
私は30年前からニンジンとリンゴのジュースを推奨しています。ジューサー(ミキサーではない)にニンジン2本、リンゴ1個を入れて作りますが、お通じやお小水の出が良くなりますし、肝機能、肩こり、血圧に効果を発揮します。ニンジンには、人間の身体に必要なビタミン、ミネラルが全部含まれています。騙されたと思って今日から試してください。また、漢方には「相似の理論」というのがあります。人間を植物に例えると、腰から下は根に当たります。年齢を重ねると腰や膝が痛み、お小水に力がなくなり、インポテンツ、足のむくみ等が出てきます。
そういう時は、ゴボウ、ニンジン、レンコン、玉ねぎをしっかり食べて下さい。「ゴボウ5時間、ニンジン2時間、山芋たちまち」という言葉もあります。
ニン� ��ンは色が赤く、貧血にもいい。結婚して15年間子供ができなかった方が、ニンジンジュースを飲み始めてすぐに妊娠したり、7年間子供ができずにいた方に双子ができたりで、私は"妊娠ジュース"などと呼んでいます。命が生まれるくらいですから非常にいいのです。胃の悪い人はキャベツ、むくみのある人はキュウリ、糖尿病のある人は玉ねぎを少量加えるといいですね。
繊維質は第六の栄養素
いま医学界や栄養学界で最も注目されているのが活性酸素という物質です。老化、動脈硬化、ガン、リウマチ等の原因になるといわれています。万病を予防する、老化を防ぐには、活性酸素を除去する物質・スカベンジャーが必要です。体内のスカベンジャーは40歳を過ぎると次第に減少します。
唾液にはペルオキシダーゼという酵素があります。一口30回噛むとよく出ますが、発ガン物質を30秒で解毒するといいます。
外から入る有名なスカベンジャーはビタミンA、C、Eです。ニンジンジュースがブームになったのはこれが含まれているからです。
お茶の中にもカテキンがあります。これには殺菌作用があります。生姜にもクルクミンという物質があります。リンゴ、サクランボ、ブドウ、プルーンはコーカサス� ��産の果物で、エラブ酸が入っています。
もう一つ大切なのが繊維です。最近になって、第六の栄養素と呼ばれるようになりました。
腸の中で吸収されずにだぶついているコレステロールや中性脂肪、糖分、ダイオキシン、農薬、化学調味料などを吸収させずに体外に捨てる働きがあります。
特に海草と豆類は優秀で、毎日食べると牛乳、肉、卵など動物性食品を少々食べても大丈夫です。
アメリカ人は肉、卵、牛乳を摂りすぎて、ガン、脳卒中、心筋梗塞になってしまいました。「栄養の目標」では、自分たちは自殺食を食べていたと発表され、国民の意識も変わってきました。
日本食、お米が身体にいいとして和食が高く評価され、いまや大変なブームとなっています。
しかし、皮肉なことに日本ではパン食の� ��慣が定着しているのです。
なぜドン·キホーテは、彼の冒険に出かけますか?
冷えと水と痛みの三角関係
どんなに健康な人でも冬山で遭難すると死んでしまいます。人間は、冷えると最後は死ぬのです。病気は「健康」と「死」の間に存在します。健康な状態から病気になり、そして死に至る。この病気をよくよく見つめると、「冷え」と「水」と「痛み」が非常に関連していることが分かります。私はこれを石原式「冷えと水と痛みの三角関係」と名付け、学会でも発表しています。神経痛の人が雨の日、身体が冷えて痛くなるのもその一例です。
冷えた時には温めないといけません。元来、身体にはそういう作用が自然に備わっています。寝冷えをすると下痢をします。これは水様便で水を捨てて身体を温めようとしているのです。冷えて風邪をひくと鼻水やくしゃみが出ます。水を捨てて身体を温めようとしているのです。
偏頭 痛もちの女性はよく嘔吐します。胃液で水を捨てて身体を温めようとしているのです。大病をすると寝汗をかきます。汗を捨てて身体を温めようとしているのです。お年寄に多い夜間頻尿は、お小水を捨てて身体を温めようとしているのです。
最近、子供のアレルギーが目立ちますが、結膜炎では涙、鼻炎ではくしゃみと鼻水、喘息では水様痰、アトピーでは湿疹等を通じて水を捨て、身体を温めようとしているのです。
漢方で昔から、アレルギーのことを水滞症とか水毒とか呼ぶ所以です。
水は人間の身体にとって最も必要なものですが、摂り過ぎると身体を冷やして害になるのです。
深刻化する小児成人病
しかし、残念なことに現代の日本人は水を摂り過ぎて身体を冷やしています。冷えの傾向は子供にも顕著で、50年前と比較すると平均体温が1度下がっていると女子医大の医師が発表しています。
体温が36度に満たないばかりか動脈硬化に伴って目に現れる「老人輪」を持つ子供も増加し、ガンや心筋梗塞など小児成人病も深刻な状況にあります。
交通事故で死んだ子供の97%に動脈硬化の症状が認められたという報告もあります。
街角には清涼飲料水が溢れ、子供も大人も必要以上に水分を摂取し、身体を冷やす甘いものや南方性の食べ物を多く摂っている現実があります。
身体を冷やす食品はバナナ、パイナップル、マンゴー、キウイ、レモン、カレー、コーヒー、緑茶、生野菜、酢の物、化学調味料など、さ� �ざまです。
そのうえ運動不足とストレスが重なり、ますます身体を冷やしています。
現代医学では、水を多く摂ることや塩分を控えることが健康に良いとする傾向がありますが、これには問題があります。
ずんぐりむっくり、赤ら顔、頭の禿げた高血圧の人、心筋梗塞、脳梗塞、痛風といったたぐいの人には確かに良いかも知れませんが、色白で冷え症の人はむしろ塩分をしっかり摂らないと駄目なのです。
下半身デブは冷えが原因
女性の多くは冷え症で、40歳を過ぎると大根足や下半身デブが増えますが、これは冷えて水分の代謝が悪くなり、むくんだ状態になっているのです。漢方では、むくみと肥満をほとんど区別しません。下半身が冷えると血液は上半身に昇り、動悸、肩こり、赤ら顔、シミ、イライラ、不眠症、吐き気、咳、口内炎、口臭などの症状を引き起こします。
人間の筋肉は70%以上が腰から下にありますから冷やさないことです。水分を摂り過ぎず、温めることが大切です。
自律神経失調症や更年期障害が、足を温めただけで治るケースが多いのもそうした理由からです。
食べ物では、青、白、緑、藍色のものは身体を冷やすので極力控え、身体を温める赤、黒、橙、黄色のものを摂るよう心掛けるべきでしょう。
牛乳は白だから身体を冷やします。熱の高い赤ちゃんにはちょうどいいのですが、赤と白が混ざってピンクになる離乳期を過ぎると飲む必要はなくなるのです。世の中に、大人になってからもお乳を飲むという動物が存在しないことを見ても明白なことです。
乳製品で栄養を摂りたいのならチーズにするといいでしょう。色が黄色くなって硬くなります。
緑茶を飲む場合は梅干しを一緒に食べるとか、紅茶ならハチミツやジンジャーを加えるとかして利尿作用を受け持つものを併せる工夫が必要です。
自殺する人は「冷えて」 いる
冷えは、自殺とも関係しているようです。世界的に自殺が多いのはハンガリー、フィンランド、スウェーデンなど寒い国で、イタリアなどは少ないのです。日本でも、岩手、秋田、新潟県など寒い地域で多いのです。自殺者は、うつ病の人に多く、自殺自体も寒い時期に多いようです。アメリカの精神科の医師が精神病患者を10年間追跡した結果、体温が低い人に自殺者が多かったという研究報告もあります。
冷えた身体にバイ菌が巣食う
要は温めることです。腰や腹が痛むとき、人はまず手をあてがいます。お手当て、すなわち手で温めることが最初の治療だったわけです。肺炎、気管支炎、膀胱炎は炎症を起こして発熱し、食欲をなくしますが、現代医学では発熱に解熱剤を用い、沢山食べるように指導します。
そもそも、これが現代医学の誤りで、自然に沿っていないのです。
熱は必要だから出るということが分かっていない。炎症の原因はバイ菌ですから、熱を発して菌を殺そうとしているのです。熱には、バイ菌を殺したり、免疫力を高めたりする作用があるのです。
また、熱が出ることを裏返せば身体が冷えているということですし、食欲不振に陥るというのは食べ過ぎを示しているのです。
黴菌は汚いところにいます。地球上の要らないもの、 死んだもの、余ったものを分解して土に戻すのがバイ菌の役目です。バイ菌が体内に入るということは、身体が汚れていると考えるべきです。
身体の汚れの原因はまず食べ過ぎです。そして、運動不足。老廃物が燃焼し切れないでいる。さらにはストレスです。血管が縮んで血行が悪くなり、冷えている。
いみじくもゲーテは「自然から離れると病気に近づく」と語っていますが、我々はもっと本能とか自然の現象に沿った生き方をしないといけません。
人間とて自然の産物ですから、食べたくない時は食べない、熱が出るときは無理をして下げないなど、自然に逆らわない姿勢が必要です。
現代医学は緊急医療としてはありがたい。しかし、慢性病に関しては疑問点が沢山あるのです。
温めるのが手当ての� �本
さて、人間は「赤ちゃん」で生まれます。赤血球が多くて熱が高く、柔らかいのが特徴です。しかし、歳をとると「白ちゃん」になります。白髪、白内障、白斑症など白くなります。白は雪の色、すなわち冷えの色です。
冷えるということは、水が氷になるように硬くなることも意味します。
ガン(癌)という病気はやまいだれに品の山と書きますが、品の山とは岩を表します。つまり硬いのです。
人間は、死ぬと冷えて硬くなります。病気も冷えと硬さがポイントです。肝炎は悪化が進むと肝硬変になります。腎臓も腎硬化症になります。
病気を治したいなら温めて柔らかくすること。これが基本です。
「生きがい療法」で有名な岡山の伊丹先生は、患者を大阪の花月劇場に連れて行き、お笑いを見せているそうです。生きがいを見い出すことや笑ったりすることは、脳からβエンドルフィンが出て体温を高め、白血球のNK細胞を活性化するそうです。これによってガン患者を中心に、非常に良い成績を上げています。
熱に弱いガン細胞
人体の臓器で唯一、ガンが出来ないのは心臓です。心臓は常に動いているので温かく、ガン細胞が発生することができません。また、ガン細胞は39.3度で死滅し、正常細胞は43度まで生きていることが実験でわかっています。だから温熱療法というのはいいのです。
わが国の景気は冷え込んでいますが、身体が温まるものを食べて、良い意味でいいかげんに生きていくことをお勧めします。
それが健康で長生きするための秘訣だからです。
(『ビワと健康』 99年4月15日/5月15日号)
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